沖縄のマンゴー農家が考える日本の農産物と貿易問題~FTA・EPA/TPP/RCEPとマンゴーの話~part3 関税率表とマンゴーや農産物の関税
はいさい、ぐすーよーちゅーがらびら!
本日は沖縄のマンゴー農家が考える日本の農産物と貿易問題~FTA・EPA/TPP/RCEPとマンゴーの話~partpart3 関税率表とマンゴーや農産物の関税と題してブログを更新したいと思います。
part1ではTPPやRCEP、FTAやEPA等の言葉の定義の説明をしました。読んでいない方はこちらから。
part2では関税の種類、基本税率やWTO協定税率、EPA協定税率について説明しました。呼んでいない方はこちらから。
今回は実際に実行関税率表を見ながらマンゴーや日本の農産物の関税、また今後の日本の農業貿易のあり方について農家の視点、考えを書いていきたいと思います。
1 実行関税率表
前回のブログで紹介したとおり、どの税率が適用されるかどうかわかるように、財務省税関のHPに掲載されています。
条約の見直しや、法律の改正により毎年税率に変更があります。
日本の貿易はNACCSという貿易システムを使用し、通関業者が申告します。財務省の税関の方々がNACCSを適宜見直し、設定することで日本の貿易が円滑に行われています。99%以上がNACCSを使用し申告されているようです。言い換えれば1%ぐらいはマニュアル(書類)で申告が行われています。
2 様々な農産物の関税
それでは様々な農産物の関税を見てみたいと思います。なお、上述しましたとおり、毎年(場合によっては年度途中)で見直しされるものもありますので、今回紹介するものは2021年4月時点となります。
見にくいところもありますが、もし気になる方は先ほど紹介した実行関税率表を是非ご自身で見てみてください。
①マンゴーの関税
解説
マンゴーについてはWTO協定税率は3%となっております。しかし、EPA締結国は無税となっていることがわかります。特に以前のブログ「マンゴーの品種・世界のマンゴーと世界のマンゴーの生産量」や「日本のマンゴーの輸入量と輸出量」で紹介したとおり、メキシコ、タイ、ペルーのマンゴーは関税が無税となっています。このことから日本のマンゴー栽培農家については、自由貿易のあおりを受け、マンゴー栽培は非常に価格競争上不利となり、日本国に守られていない作物と考えられます。
②パイナップルの関税
解説
パイナップルついてはWTO協定税率は17%となっております。マンゴーのWTO協定税率が3%に比べると非常に高い関税が賦課されています。EPA締結国でも、パイナップルについて協定を交わした国は少なく(空白欄は協定を結んでいないことになっています)、無税であるのは、フィリピン、インドネシア、タイとなっていることがわかります。しかしそのパイナップルも無税である条件として、900G以下、皮がむかれていないものと限定されています。加工されると無税が適用されないものとなっております。
現在台湾と日本はEPA協定を結んでいません。台湾と中国との貿易問題で、台湾産のパイナップルが日本に相当量輸入されていますが、台湾産のパイナップルは17%の関税を課せられ輸入されています。スーパー等でも台湾産とフィリピン産のパイナップルが並ぶとフィリピン産のパイナップルが安いのは、この関税分が理由と推測されます。しかしマンゴーに比べるとかなり日本国から守られた農産物と言えます。
③じゃがいも
解説
じゃがいもについては、WTO協定税率は4.3%となっております。加工されていない農産物の中では比較的高めとなっております。(だいたい3%が農産物の関税となっております)EPA締結国では無税となっており、じゃがいもについてもマンゴー同様に自由貿易のあおりを受け、非常に価格競争上不利となり、日本国に守られていない作物と考えられます。
④米の関税
解説
米については、暫定税率が49円/KG設定されています。(WTO協定税率は341/KG)と高いので暫定税率が適用されます。しかしながら注釈が多く、米については低関税で輸入できる量に制限があり(関税割当制度)、この税率で輸入されることは少なく、ある一定の量が超えるとまた高い関税が賦課されます。非常に複雑なものとなっております。EPA締結国でもほとんど米については妥結されておらず、日本国がいかに米について特別に自由貿易から守り、国内産業として保護するスタンスであるか、よくわかるものとなっております。
⑤牛肉の関税
解説
牛肉については、暫定税率が38.5%で設定されています。(WTO協定税率は50%)と高いので暫定税率が適用されます。しかしながら米同様注釈が多く、輸入できる量に制限があり(関税割当制度)、この税率で輸入されることは少なく、ある一定の量が超えるとまた高い関税が賦課されます。非常に複雑なものとなっております。EPA締結国でもほとんど牛肉については妥結されておらず、妥結されていたとしても非常に高い関税が課されています。日本国がいかに米同様牛肉について特別に自由貿易から守り、国内産業として保護するスタンスであるか、よくわかるものとなっております。
⑥飛行機
解説
飛行機については、無税となっております。基本的に日本国については、工業製品の関税は無税となっております。これは日本については工業製品に世界的に競争力があるので、無税で入ってきても国内産業は価格より品質で上回ることができるので、割を食わないことが起因となっております。しかし現在の日本はどうでしょうか?かなり外国製品に価格でも品質でも負けている部分が多く、国内の電子、工業製品が撤退をよぎなくされております。サンヨーやシャープ、東芝等は私が小さい頃は大企業でした。今後のパナソニック、日立等も今まで通りとは行かないでしょう。
⑦ワクチン
解説
ワクチンについてはも無税となっております。今回新型コロナウイルスのワクチンは関税も無税、特例で消費税も無税で輸入されているようです。
日本の農家とFTA・EPA/TPP/RCEPの考え方は
実は農家の中でもFTA・EPA/TPP/RCEP等の自由貿易について反対の意見が多いのは、コメ農家や畜産関係者が多いです。前述のとおり米や畜産分については、かなり高い関税が賦課されています。それ以外の農家さんで反対している方がいるとするならば、①ぶどう、みかん農家、②コメ農家や畜産農家がかわいそう、③JAに反対するよう言われている、④自分の農産物の関税がいくらか知らず反対しているような人でしょう。一部の農産物や畜産製品には未だ高い税率が加算されています。みかん・ぶどう、米、砂糖、お肉や乳製品が特に高いです。みかんやぶどうは日本が旬の時期は、国産品を買ってもらうように、関税が上がります(季節関税)なぜ関税があるかというと、国内の産業を守るためにあります。守られている側はどうしても守り通したいと主張するのは当たり前ですよね。守るものも、農家の生活もありますが、砂糖などは特に沖縄の離島では現在もさとうきび産業が主な産業となっており、離島の生活を守る=国土国境を守るという、外交上の趣旨もあります。前述したとおり国を守るには産業を守らないといけないこともあります。しかしほとんどの農産物については既に高い関税は撤廃されています。
私たち農業者は、日本国内だけでなく世界に輸出したいと思う農業者も多いと思います。マンゴーの生産量は日本では3,869.1トンに対して、輸出量はたったの6.5トンです。非常に少なすぎます。貿易を自由化するのは結構ですが、入ってこられるばかりだと困ってしまいます。特に問題なのが、他国では承認されていない農薬等で輸出できない事例があります。先日も福岡から輸出したイチゴが残留農薬で輸出できない事例がありました。詳細はニュースでは不明でしたが、日本では使用できる農薬のようです。逆に日本では安全性が確認できない農薬があるから輸出を止めているという話はあまり聞きませんよね、、、
農家にとっては輸出する作物と国内用の作物と分けるのは非常に手間がかかります。同じ人間が食べる農産物であれば、他国でも安全と言いきれるはずです。ワクチンだって外国人と同じのを打ってます!!日本の政府には是非日本で使用できる農薬を相手国でも安全とするよう働きかけ、日本の農産物の輸出をもっと推進していってほしいなぁと思います。
地産地消、国産国消をもっと推進していかないといけないと思います。私たち農業者も選んでもらえるよう努力しないといけません。安い外国産に負けない魅力ある商品をお届けできたらと思います。
参考
沖縄の農園からマンゴーを直送|伊集農園(いじゅのうえん)
伊集(いじゅ)農園は沖縄県本島の八重瀬町でマンゴーを栽培しています。真っ赤に
染まった秀品(Aランク)は、贈答やプレゼントにおすすめです。ご自宅用に人気の手ごろな
お値段の品も用意しております。また日本で初めてマンゴーで国際水準の安全認証
AISIAGAPを取得しましたので、おいしい国産マンゴーを安心して食べていただけます。
屋号 | 伊集農園 |
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住所 |
〒901-0504 沖縄県島尻郡八重瀬町字後原1133-2 |
営業時間 | 18:00~21:00 |
代表者名 | 伊集 守康 (イジュ モリヤス) |
info@iju-mango-okinawa.com |